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2025/06/25

マリア様に眼潰し5


今日は新入生歓迎会、お聖堂でおメダイという小さなメダルをかけてもらう…らしい。
私達のクラスは李組の後、順番を待つ。
 
(おぉ…マジで聖さんってお偉いさんだったんだな…)
 
前方におメダイをかける山百合会の人達がいて、そのメンバーの中に聖さんの姿を発見する。
しかもこのまま進んで行ったら、私は聖さんにおメダイをかけてもらう事になりそうだ。
あの時の爆笑していた印象が重ならない程、澄ました表情をしておメダイをかけていく聖さん…ああしてる所を見ると、生徒達の代表なんだなって納得出来た。
 
しかし、山百合会のメンバーって美人ばっかだな~眼福眼福。
 
ぼけーっと美人な山百合会メンバーを眺めていると、あっという間に私の番が来た。
 
「マリア様のご加護がありますように」
 
そう決まり文句を口にする聖さん、でもその表情は先程までの澄ました表情とは違い、何処か笑いを含んでいる様に感じた。
頭を下げ、聖さんにおメダイをかけてもらい頭を上げる時に視線を合わせ…ニヤリと私は笑う。
そして視線だけで、紅薔薇さまだったか?の所に並んでいる志摩子を聖さんに教える。
聖さんもそちらをチラリと見て、私のお節介にだろうか…小さく苦笑を漏らした。
 
 
まあ何がしたかったんだ?と問われても答えられないけど、志摩子も聖さんもお互いが気になって仕方ないみたいに感じる。
でも、二人とも最初の一歩を踏み出す事が出来ずにいるんだと思う。
何か切っ掛けがあればいいんだけどな…
 
そんな事を考えながら聖さんの前から離れた私…しかし、私達のそんな様子を見ていた人がいたなんて、私は気付いていなかった。
 
 
 
あの新入生歓迎会から一週間、現状は変わりなく…ただ過ぎていった。
しかしその放課後の事。
 
「志摩子~今日は委員会ないんだよね?一緒に帰ろうぜい」
 
鞄を持って志摩子の席に行き声を掛ける。
 
「ええ、帰りま「志摩子さんと夕貴さんにお客さんがいらっしゃてるわ」…お客さん…?」
 
返事を返そうとした志摩子の言葉に、私達を呼んだクラスメイトの言葉が被る。
 
「誰だろ?…ありがとう」
 
私に思い当たる人はいない、志摩子に目を向けると志摩子もいないのか首を横に振る。
志摩子一人が呼ばれるなら、委員会関係とかで心当たりがあるかもしれないけど…二人セットで呼ばれるっていうのは…まあ考えても仕方ないので、取り次いでくれたクラスメイトに礼を言って志摩子と二人で私達を呼んだ人のいる、教室の外に向かった。
 
 
教室の外で私達を待っていたのは、髪の毛を三つ編みにした生徒。
 
「志摩子さんと…夕貴さんね?」
 
開口一番に本人か確認された…志摩子は中等部からリリアンにいるからお互い知ってるかも知れないけど、私は初対面だからな。
 
「「うん(はい)」」
 
「あのね、一緒に来ていただけないかしら。委員会活動とか、今日はないでしょう?」
 
その初対面である私まで何処に連れて行きたいんだ?というか誰なんだ?
 
「どちらに?」
 
志摩子が私達の返事を聞かず歩き出す三つ編みちゃんに聞く、微笑んで答える三つ編みちゃん。
 
「薔薇の館に」
 
「薔薇の…」
 
簡潔なその答えに志摩子が息を飲んだ。しかし私にはさっぱり分からない。
 
「えぇと…薔薇の館って何?」
 
仕方なく素直に聞くと、私の問いに三つ編みちゃんが目を見開いて驚いている。
 
「薔薇の館をご存じではないの?あっ遅くなってしまったけど…私は島津由乃よ」
 
今更ながら自己紹介をしてくれる、三つ編みちゃん改め由乃さん。
 
「あぁ由乃さんね、それで恥ずかしながら…まだまだ知らない事ばかりでね、良ければ教えてくれるかな?」
 
「そう言えば、夕貴さんは外部入学者だったわね…それで薔薇の館はね、簡単に言ってしまうと生徒会室と同じものよ」
 
生徒会室に薔薇の館なんて仰々しい名前が付いてるのか…うぅむ…ややこしい。
こんな話をしていると、いつの間にか目の前には古い木造の二階建て洋館。由乃さんはその洋館の扉を開け中に誘う。
 
「勝手に入っていいものなのでしょうか?」
 
少し不安そうに由乃さんに聞く志摩子、確かに生徒会室に無関係な一般生徒である私達が断りも無しに立ち入るのは気が引ける。
 
「え?…あぁ」
 
それを聞いた由乃さんは、おもむろにセーラーカラーの内側に手を入れて緑色をしたロザリオ…かな?を見せてくれた。
それって何か意味があるのか?いや、わざわざ見せるからには私の知らない意味があるんだろうけど…。
 
 
「私、入学式の日より支倉令さまの妹になりましたの」
 
…支倉令って誰?そう思った私だけど、何だか知ってて当たり前の様に話す由乃さんに聞くのは憚られた私はその疑問をスルーしておく。
 
「ほうほう、そうなんだ…んでその生徒会室に、一般生徒である私達が呼ばれたのは何で?特に問題を起した覚えなんて無いんだけどな…」
 
「私は何故二人が呼ばれたのかは聞いていないわ、迎えに出されたのが私なのは志摩子さんの顔を知っているからっていう理由だもの」
 
薔薇さまでちゃんと知ってるのって聖さんだけだしな…でも聖さんがわざわざ人を使って私達を呼び出すとは考えづらい。
 
「それは、白薔薇さま……?」
 
志摩子も、それを疑問に思ったのか由乃さんに聞く。
 
「いえ、待っていらっしゃるのは、紅薔薇さま達」
 
話しながら薔薇の館に足を踏み入れる。
館内は外観と同じように古びていて、それこそ階段なんて足を掛けると…今にも崩れそうな音がする。
 
「この階段大丈夫かな…今にも崩れそうなんだけど、一人ずつ上った方が良くない?」
 
不安から、思わず提案すると由乃さんが苦笑する。
 
「もっと多い人数で上っても大丈夫だったから、崩れないわよ…多分」
 
最後に付け加えられた『多分』に、由乃さんも少しはそう思っているという本音が見えた。
 
三人で、階段をギシギシ言わせながら上りきり、階段から続く廊下の先にある茶色い大きな扉を由乃さんがノックした。
 
「藤堂志摩子さんと風見夕貴さんをお連れしました」
 
「御苦労さま、入っていただいて」
 
由乃さんが扉の中に声を掛けると、そう返事が返ってきた。
扉を開けた由乃さんに、促され私達は部屋の中に足を踏み入れる。
 
「藤堂志摩子です」
 
そう言って挨拶する志摩子、私もそれに習う。
 
「風見夕貴です」
 
頭を下げてから、私達を呼んだ人達を見る。
ふむ、お聖堂で少し見たけど…改めて近くで見るとホントに綺麗な人達だ…聖さんも綺麗だし、目が肥えてしまいそうだね~まあ身近に志摩子という美少女がいたけどタイプの違う美人達で圧倒されちゃうよ。
 
私達を招き入れた、紅薔薇さまと黄薔薇さまは椅子から立ち上がり
 
「お呼び出しして、ごめんなさいね」
 
「ちょっとお話を伺いたくて」
 
そう言って、椅子を引き私達二人は強引に腰を下ろさせられた。
なんとも…有無を言わせない強い人達だな~とこの短い時間で思い知らされる。
紅薔薇さまと黄薔薇さまの顔には柔らかい笑顔が浮かんでいる…が、その笑顔の裏では何を考えているのか…私にはわからなかった。

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2010/07/14 二次創作…マリア様に眼潰し(連載中) Trackback() Comment(0)

アリア様に眼潰し4


入学式から数日が経ち、ほんの少しリリアンという学校に慣れてきた…私って結構順応性高いんだなって、自分の事ながら感心した。
 
学校生活に余裕が出来ると自然意識は周りに向く。
今のところ、クラスで私は孤立と言う程ではないが少し浮いているような感じ…親しいのは志摩子だけで話かけてくるクラスメイトはいるが、そこから発展することは無い。
 
そして…頼みの綱(?)である志摩子は、あの入学式の日から様子がおかしい様な気がする。
うんまぁ、原因は聖さんとの出会いなんだろうなぁ…って勝手に思ってる。
傍から見てても何て演出的な出会いだよって思うもんな~あんなシチュエーションでの出会いって中々無いでしょ?
心此処に無いような志摩子を見ながら…これって恋なのかね?いやいや、志摩子に限ってそれは無いか?でも症状的には近い物が…う~んわからん…
 
ボウっと考えこんでる様子な志摩子を観察しながら弁当を食べる。
今いる場所は、入学式の放課後に見つけた静かで銀杏の木のある穴場(志摩子的に)。
 
「ふぅ…」
 
黙々と弁当を食べていると、志摩子が溜息を吐く。
 
「志摩子」
 
「…?どうしたの夕貴?」
 
飛んでいた志摩子の意識が私に向く。
 
「どうしたの?じゃなくてさ…目の前で、んな重い溜息吐かれると凄く気になるんだけど…」
 
聖さんとの出会いが志摩子に何を齎したのか、それは志摩子にしか分からない…私が口を出しても大して役にも立たないと思うのだけど…幼馴染のこんなに思い悩む姿を見て、何もしないではいられない。
 
「………」
 
「志摩子がそんな状態になったのって、聖さんと会ってからだよね?何がそんなに志摩子を悩ませているのか私には分からない、けどさ…行動しないと現状は変わらないよ?」
 
「聖…さん?」
 
「あの桜の下で会った人の名前だよ…フルネームは佐藤 聖、三年生だそうな」
 
そう言えば、志摩子に聖さんと話したって事言って無かったな。
 
「佐藤…聖さま…白薔薇さまだったの……、でも…私自身どうしたらいいのか分からないの…今聖さまに…白薔薇様に会ってどうしたいのか…」
 
少し俯き…静かに語る志摩子に…私は黙り込む。
 
「そっか…なら仕方ないか、まあ焦る事は無いしね」
 
「ごめんなさいね…夕貴にも心配を掛けてしまって」
 
「んにゃ心配してるのは私の勝手だしね…けど、志摩子は笑顔が綺麗だから…笑ってて欲しいってか…あー…私は何恥ずかしい事言ってるんだ…」
 
言っている途中から恥ずかしさが込み上げてきて、私は少し熱い頬を指で掻く。
 
「ふふ…、ありがとう夕貴」
 
照れている私を見て、志摩子は優しい笑顔を浮かべる。
 
「ん~あ~…そう言えば!!白薔薇って何の事なんだ?」
 
その笑顔に更に照れてしまい話を変えるように、気になった事を聞いてみる。
 
「え?…聖さまの事は知っているのに、白薔薇さまの事を知らないの?」
 
「はあ…?聖さんの事は本人に聞いたけど、白薔薇なんて言葉は出てこなかったぞ?」
 
志摩子は「本人に聞いた」の所で驚いたのか、目を見開いている。
 
「本人って…?」
 
「あの志摩子が走って行っちゃった後、少し話したんだよね~んで聖さんと友達になったんだ」
 
まぁあれ以来会って無いけど…学年が違うと中々会う機会って無いもんだ。
志摩子以外で、リリアンの中に出来た初めての友達なのに…寂しいのう。
 
「………ともだち?…夕貴…聖さまとお友達なの?」
 
「うむ、会ったのは一回だけだけどねー…それで白薔薇って何なのさ?」
 
「あ…白薔薇さまはリリアンでは山百合会って呼ばれているリリアン生徒達の代表よ。山百合会は生徒会と同じ物で、赤薔薇さま・黄薔薇さま・白薔薇さまの三人とその妹である蕾の方々、蕾の妹で構成されているの…聖さまはその白薔薇さまを務めていらっしゃるの」
 
「ほほう…じゃあ聖さんは実はお偉いさんだったと?あちゃ~…やっちまったぜ」
 
そんな事とは知らずって言ってもやっちまったものは仕方ないし…気にしないでおこう、うん。
 
「夕貴…何をしたの?」
 
自分に心の中で言い聞かせていると、志摩子がとてもイイ笑顔で聞いてくる。
 
「え”っ………ツッコミと下ネタを少々…」
 
その笑顔に恐怖を感じた私は、素直に白状してしまう。
 
「…はぁ…夕貴…」
 
少し呆れた様に溜息を吐いた志摩子は、それ以上何も言わず弁当を食べるのを再開する。
溜息とノーコメントは何気に傷つくよ志摩子っ!?付き合いが長いからこその放置…志摩子がこんな対応するのって私位だよね…喜んで良いのか、悪いのか…
 
 
ションボリと私も弁当の残りを食べる、私はMじゃないから放置プレイは喜ばないんだぞ!!と内心で滂沱な涙を流した。
 

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2010/03/10 二次創作…マリア様に眼潰し(連載中) Trackback() Comment(0)

マリア様に眼潰し3


思わず入れてしまったツッコミに、彼女がビクッと反応する。
 
「誰!?」
 
強い口調で問われるが…何と返したらいいだろうか?
 
「ごく普通の一般的な一生徒ですよ?」
 
口から出たのはそんな言葉。
そんな私を睨み、更に問いかけてくる。
 
「いつから…いつから見ていたの?」
 
「最初からだけど…走り去った子は私の友達でしてね、一緒に桜見に来てたんですよ」
 
軽く答えてみると、キョトンとした顔で私見ている。
 
「最初から…?」
 
「ええ、貴女の視界には入ってなかったっぽいですけど」
 
苦笑しながら答えると、何処かばつの悪そうな表情になり頭を下げる彼女。
 
「そ、そうだったの…ごめんなさい」
 
どことなく気まずい空気が流れる。
 
「あぁっと…それじゃそろそろ行きますんで…」
 
志摩子に置いていかれて結構経ってるし、志摩子だから私を置いては帰らないと思うけど…待たせたら悪いし。
 
志摩子の走り去った方に足を踏み出す。
 
「あ…ちょっと待って!!」
 
「はい?」
 
止められて、振り返るとこちらを真剣に見つめる瞳と視線がぶつかった。
 
「あの子と君の名前…教えてくれないかな?」
 
そう聞かれて、隠すような事じゃないので素直に口を開く。
 
「あの逃走して私を放置プレイした薄情者は1年桃組の藤堂 志摩子、んで現在放置プレイ中の私は風見 夕貴という名にございます」
 
「…放置プレイて……くく…ははははっ」
 
私の発言に一瞬呆然として、次に爆笑する彼女。
いかん…今日一日で溜まったストレスのせいで発言がおかしくなってしまった…しかしこうして爆笑する彼女を見ているとさっきまであった気まずさは無くなり、何だか楽しくなってくる。
 
「それで…放置プレイがツボだった貴女のお名前は何というのでしょうか?」
 
いまだ笑い続けている彼女に、こちらから聞いてみる。
 
「くく…はぁはぁ…ああごめんごめん、私は…はぁ…はぁ佐藤 聖…3年だよ」
 
笑い過ぎて息切れを起している聖さん…この人下ネタ好きか?
 
「3年生だったんですか…ご無礼致しました」
 
上級生相手に、ちょっとアレな発言をしてしまったので一応謝る。
 
「いいよ、君って楽しい子だね~夕貴って呼んでいい?」
 
呼吸が漸く治まってきた聖さんは楽しそうに笑顔で聞いてくる。
 
「いいですよ」
 
「よしっ、それでさー夕貴ってもしかして外部入学者?」
 
おや…やっぱり分かってしまう物なのかね?
 
「そうです、高校からリリアンです」
 
「あーやっぱり、なんかリリアンには珍しいタイプだと思った…はは、気に入ったよ夕貴の事…ねえ私と友達にならない?」
 
ニコニコしながら聞いてくる聖さん、別に断る様な理由も無いし特に何も考えず頷く。
 
「いいですよ、聖さんっていいキャラしてるっぽいし…よろしく聖さん」
 
「うん、こちらこそよろしく夕貴!!」
 
こうして学年は上だけど、下ネタを言っても大丈夫な友達をgetした。
 
 
 
あれから、聖さんは用事があるからと言って去って行き…私は志摩子の行方が分からないので校門に向かった。
 
「志摩子…発見」
 
そして校門の所で立ち尽くす志摩子を見つけた。
 
「あ…夕貴!!」
 
私の姿を見つけた志摩子は、私のもとへ駆け寄ってくる。
 
「ごめんなさい!!いきなり走って行ってしまって…」
 
駆け寄るなり頭を下げてくる志摩子。
 
「置いてけぼりにされて…悲しかったぞ…」
 
しょんぼりと落ち込んだ振りをしてみると、焦った志摩子がオロオロとする。
 
「本当にごめんなさい!!」
 
なかなか珍しい表情だ、普段は穏やかにフワフワ微笑みを浮かべてる志摩子。酷いかもしれないけど、たまに違う表情を見るのもいいもんだ。
 
「志摩子には…お仕置きしなきゃだな」
 
しょんぼり俯いていた顔を上げ、ニヤリと口の端を釣り上げる私。
 
「え…?きゃっ!?」
 
私の両手は志摩子の脇腹に伸びて、柔らかい志摩子の体を擽る。
 
「あ…ゆ、夕貴っ!?んっ…やめ…くすぐったいわ…」
 
「………」
 
何か凄く色っぽい…少し後悔した…。
 
「夕貴?」
 
「こほん…とりあえず帰ろうや」
 
頬を赤く染めた志摩子からそっと手を離し目を逸らす。
軽く咳払いして、気を取り直し提案してみる。
 
「?…そうね」
 
私は頷いた志摩子と二人、近くのバス停に向かって歩き出した。
 
 
何だか締まらないが、私のリリアン初日はこうして終了した。
 

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2010/03/08 二次創作…マリア様に眼潰し(連載中) Trackback() Comment(0)

マリア様に眼潰し2

入学式も無事終わり、今は教室にいる。
私の振り分けられたクラスは1年桃組…って桃組って幼稚園かよ!!何ていうツッコミはクラス分け表の前でしたさ。
小声で呟いただけだったので志摩子にしか聞こえなかったと思うけど…志摩子には苦笑された。
その志摩子も同じクラスで凄く心強く感じた、私にとって此処はアウェイ…中等部からの持ち上がりばかりの生徒の中、少数派の高校から入学者で少なからず視線を集めていて…私は見世物じゃねぇ!!と叫びたくなった。
 
 
「じゃあ…自己紹介をしてもらいましょうか」
 
担任教師のその言葉で出席番号順に自己紹介が始まる。
私の姓は『風見』なので割と早く順番が廻ってくる。
先に自己紹介した人達に倣い、名前と趣味位でいいかと考えていると。
 
「では次の人どうぞ」
 
前の席の生徒が自己紹介を終え、席に着く…私の番だ。
 
「風見 夕貴です。趣味は祖父に習っている剣術、体を動かすのが好きです。後…高校からリリアンに入学した為、作法などに疎いので気になった事があれば言ってくれると有り難いです」
 
そう言って軽く頭を下げて自己紹介終了、席に着いて私は小さく溜息を吐いた…これだけの事だけど、変に疲れる。
私はボーっと前を向き、後に続く自己紹介を聞いていた。
 
 
 
志摩子side
 
席を立ち自己紹介をする夕貴を眺める。
高い身長に、黒いセミロングの髪を無造作にポニーテールにしている後姿。
少し鋭く見えてしまう切れ長の目、でも見た目に反して性格は優しい彼女…それが私の幼馴染である風見 夕貴。
物心付く前からの幼馴染で小学校を卒業するまでずっと一緒だった…私がリリアンに入学するまでは…。
リリアンに入りたかったのは事実だけど、本当は夕貴とも一緒に学校へ通いたかった。
でも夕貴にリリアンに一緒に通ってなんて勝手な事言えなくて…夕貴は公立の中学校に進学し、私達は別々の道を歩み始めた…でも再び私達の道は交差し共にいる事が出来る様になった。
 
こんな事を夕貴に言ったら怒られてしまうかしら?貴女が源次郎さんに負けてくれて良かったって…
 
 
志摩子side…end
 
 
 
後に続いた生徒達の自己紹介が終わる、勿論志摩子も何の問題も無く自己紹介を終えている。
それから程無くして解散となった。
 
「う~っ…はぁ…」
 
伸びをして、この数時間で凝ってしまった様に感じる体を伸ばす。
そんな事をしていると、後ろから肩に手を置かれた。
 
「疲れたの夕貴?」
 
こんなに親しげに私に触れて来るのは、志摩子しかいない…そして振り返る前に、志摩子が正面にやって来た
 
「うん、気疲れしたよ…今までと環境が違い過ぎるからさ」
 
「ふふ…夕貴ならすぐ慣れるわ」
 
「そうかね?う~ん…考え込んでも仕方ないし…とりあえず帰るかい?」
 
志摩子の手には鞄があり、帰る準備は出来てる様子。
 
「ん…少し校内を廻ってみない?夕貴はリリアンが初めてだし、何処に何があるか知っていた方がいいと思うのだけど…」
 
どう?ってな感じで首を横に傾げ聞いてくる志摩子。
 
「そうだなー…んじゃ案内頼んでいい?」
 
「ええ、勿論」
 
私がそう聞くと、志摩子はふわりとした笑顔を浮かべ頷いた。
 
 
二人で校内を廻る、校舎内部にある移動教科の教室、外にある施設、等々を二人で雑談しながら廻っていった。
 
「うわぁ…お聖堂とか温室とか…どんだけお嬢様学校なんだよ」
 
苦笑交じりに言う、まあお聖堂はミッション系の学校だからか?
 
「ふふ、私はあの銀杏並木が嬉しいわ」
 
「あぁ…だろうなぁ」
 
この子は銀杏が大好きだから…ちなみに私は好きでも嫌いでもない。
 
「ん?あそこの桜奇麗だなー…見に行ってみない?」
 
「本当ね…ええ」
 
今の時期、満開になっている桜…風が吹けば舞い散る花弁に、吸い寄せられる様に二人で歩いて行く。
 
木の少し手前で立ち止まった私、志摩子はそのまま桜の花弁が舞い踊っている木の下まで進んで行き、桜を見上げている。
 
その光景は…何処か幻想的で…凄く奇麗だった。
 
 
志摩子が桜を見上げている姿を眺めていると、ガサっと何かを踏みしめた様な物音がしたので私はその物音がした方に目を向ける。
そこには…何処か日本人離れした顔立ちの生徒がいた、その時少し強い風が吹き視界を桜の花弁が埋め尽くす。
暫くすると風が治まり、改めて彼女を見ると視線は志摩子に固定されている、おそらく私は彼女の眼中に入っていないっぽい…お?志摩子が彼女に気が付いた…
 
「あ…」
 
どちらが呟いたか分からない声。
 
「あなたは…」
 
現れた彼女はそう呟くが、そこで言葉が途切れる。
 
「失礼いたしました」
 
そう言って志摩子がいきなり駆け出す。
私は事の展開について行けなくて、志摩子に置いてけぼりにされた。
例の彼女に目を向けると、桜の幹にもたれてどこかホッとした様な
表情をしている。
 
「大丈夫、人間の女の子だった」
 
そう呟くのを聞いて…つい
 
「そりゃ当たり前でしょ」
 
ツッコミを入れてしてしまった。
 

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2010/03/07 二次創作…マリア様に眼潰し(連載中) Trackback() Comment(0)

マリア様に眼潰し1


 

「爺っ!!覚悟―!!」
 
手に持つ竹刀を振り上げ、正面に立つ竹刀を構えた爺に斬りかかる。
 
「ふん…甘いわっ!!」
 
面(頭)を狙った一撃は爺の持つ竹刀に逸らされ、空を斬る。
 
「ちぃ…って、痛ぇー!?」
 
空振った私に出来た隙に、爺の竹刀が私の頭を捉え打ち据える。
頭を襲う衝撃、そして痛みに私は行動不能に陥った。
 
 
「今日が最終日じゃったな?諦めてあの学校の試験を受けるんじゃぞ」
 
痛みに悶える私を無視して、そう言う爺。
 
「ぐっ…わかったよ!!受けるよ…真剣に試験も受ける、約束は守るさ」
 
悔しさを抑えられず、荒い口調で答えてしまうがそれも仕方ないだろう?この勝負で私の高校受験の学校が決まってしまったのだから。
 
「ちゃんとリリアン一本で受験するよ…」
 
 
話の始まりは爺との約束…爺との勝負に勝てなかったなら、ここいらでお嬢様学校と有名な私立リリアン女学園に進学せよ…なんていう、無茶苦茶な約束をしてしまった事が発端だ。
はっきり言って、私はお嬢様なんてものから程遠い人間であり縁遠い学校としてしか認識していなかったのだ…それがいきなり爺の思いつきにより、身近な物となってしまった。
 
 
 
 
私の名前は風見 夕貴、今日からリリアン女学園に通う高校一年生…あの爺との勝負に負けた日から数カ月が経過し、今日がリリアンの入学式だ。
 
私は早い目に家を出て、学校に向か…わず幼馴染の家に向かい歩いている。
幼馴染の家はここ等で檀家をたくさん持つ寺の娘さん、で私は階段を上り本堂ではなく家族の生活している家の玄関に向かう。
その途中、袈裟を着た坊主なおじさんに出会った。
 
「おはよーおじさん」
 
挨拶をすると、こちらに背を向け掃き掃除をしていたおじさんがこちらを振り向く。
 
「おぉ!!夕貴ちゃんじゃないか、おはよう!!志摩子を迎えに来てくれたのかい?」
 
ニカっと笑顔を向けて聞いてくるおじさん、おじさんは幼馴染のお父さんで…家の爺さんと親友な間柄の為、昔からよく面倒をみてもらった。
良いおじさんなんだけど…悪戯っ子気質で、幼馴染で賭けをしたり、今回の私がリリアンに進学した件にも一枚噛んでる…少々困ったおじさんである。
 
「迎えに来たってか…道案内してもらおうと思ってね…志摩子まだ居る?」
 
「そうかそうか、志摩子ならもうじき出て来ると思うよ…ほれ、噂をすればってな」
 
おじさんの言葉に玄関に目をやると、カラカラと引き戸を開け幼馴染がリリアンの制服を着て姿を現した。
階段に向かい歩きだした幼馴染は、程無く視界の中に私を見つけ目を見開く。
 
「え…ゆ、夕貴?!」
 
ウェーブの掛った長い髪に、フランス人形を思わせる端正な…それでいて穏やかで優しい顔付をした女の子、私の物心付いた頃からの幼馴染…藤堂 志摩子。
 
「おっす、おはよー志摩子、一緒に学校行こーぜ」
 
志摩子に軽く手を上げ、混乱している志摩子を軽く無視して挨拶する。実は志摩子に秘密にしていたんだよね…リリアンに進学するって…
 
「え?うん…じゃなくて…どうして夕貴がリリアンの制服を着ているの?」
 
一瞬私に流されかけたのだけど、完璧に流すのはやっぱ無理だったみたい。
 
「そりゃあ夕貴ちゃんがリリアンに入学したからに決まっているだろう」
 
私が答える前に、楽しそうにニヤニヤ笑みを浮かべるおじさんが答えてしまう。
 
「夕貴が…リリアンに…?」
 
普段の私を知る志摩子には、私=リリアン生徒が浮かばないらしい…そんな志摩子に私は苦笑が漏れる。
この口調もそうだが、色んな面から見ても私っていう人間はお嬢様ていう物とは正反対に位置してる…自分でも信じたく無いのだ、自分が今日からリリアン生だなんて。
…まあ志摩子のこんなに驚く姿が見れたから、良かったかな?
 
「はっはっは!!サプライズ成功だな!!」
 
おじさんは楽しそうに大声で笑ってる…おっさんは自重しろや。
私のいる所まで駆け寄ってきた志摩子は珍しく怒りをその顔に浮かべ、志摩子よか高い位置にある私の顔を見上げ口を開く。
 
「どうして教えてくれなかったの?リリアンを受けるって…」
 
「あー…家の爺さんとおじさんに口止めされてたんだよ…だから怒っちゃいやん」
 
冗談交じりに答えると、志摩子は重い溜息を吐き諦めた表情を浮かべる。
 
「それでも教えて欲しかった…夕貴のいじわる」
 
拗ねた様に呟く志摩子に、軽く手を合わせ「ごめんごめん」と謝りとりあえず学校に行こうと促す。
 
「そうね…でも…ちゃんと詳しく顛末を話して貰うから」
 
志摩子はそう言って、ガッチリと私の腕を捕まえ歩きだした…そんな私達をおじさんは生温かい目で見送っていた。
 
 
道すがら、志摩子に問い詰められ事の顛末を話す。
問い詰めって言っても、志摩子の性格柄怖い訳じゃないんだけど…低い位置から上目遣いでこちらを見詰められると、何だか白状しないといけないような気分になってくるから不思議だ。
 
「てー訳で、わたしは被害者なのだよ志摩子君…自分でもリリアンに通うなんて信じられないんだ」
 
「そう…源次郎さんと父は仕方ないわね…本人の意思を無視してしまうなんて…」
 
源次郎は家の爺さんの名前である。
 
「まあ…勢いとはいえ、約束したのは自分だから仕方ないんだけどねーというか、この口調じゃ不味いかね?」
 
頬をポリポリ掻き、志摩子に聞くと
 
「そうね、もう少し丁寧に話す様に心掛けた方がいいと思うわ…私は慣れているから何とも思わないけれど、気にする方は居ると思うし」
 
苦笑しながら、リリアンについて詳しく説明してくれる。
 
リリアンでの挨拶はごきげんようだとか、校門を抜けてから校舎までの途中にあるマリア像にお祈りするんだとか…いや…全部覚えるのは無理だから。
あぁ…あまりにも特殊過ぎて頭がクラクラする。
 
志摩子先生による「リリアン講座」は学校に着くまで続き、改めて私に向いていないと再確認したのだった。
 

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