思わず入れてしまったツッコミに、彼女がビクッと反応する。
「誰!?」
強い口調で問われるが…何と返したらいいだろうか?
「ごく普通の一般的な一生徒ですよ?」
口から出たのはそんな言葉。
そんな私を睨み、更に問いかけてくる。
「いつから…いつから見ていたの?」
「最初からだけど…走り去った子は私の友達でしてね、一緒に桜見に来てたんですよ」
軽く答えてみると、キョトンとした顔で私見ている。
「最初から…?」
「ええ、貴女の視界には入ってなかったっぽいですけど」
苦笑しながら答えると、何処かばつの悪そうな表情になり頭を下げる彼女。
「そ、そうだったの…ごめんなさい」
どことなく気まずい空気が流れる。
「あぁっと…それじゃそろそろ行きますんで…」
志摩子に置いていかれて結構経ってるし、志摩子だから私を置いては帰らないと思うけど…待たせたら悪いし。
志摩子の走り去った方に足を踏み出す。
「あ…ちょっと待って!!」
「はい?」
止められて、振り返るとこちらを真剣に見つめる瞳と視線がぶつかった。
「あの子と君の名前…教えてくれないかな?」
そう聞かれて、隠すような事じゃないので素直に口を開く。
「あの逃走して私を放置プレイした薄情者は1年桃組の藤堂 志摩子、んで現在放置プレイ中の私は風見 夕貴という名にございます」
「…放置プレイて……くく…ははははっ」
私の発言に一瞬呆然として、次に爆笑する彼女。
いかん…今日一日で溜まったストレスのせいで発言がおかしくなってしまった…しかしこうして爆笑する彼女を見ているとさっきまであった気まずさは無くなり、何だか楽しくなってくる。
「それで…放置プレイがツボだった貴女のお名前は何というのでしょうか?」
いまだ笑い続けている彼女に、こちらから聞いてみる。
「くく…はぁはぁ…ああごめんごめん、私は…はぁ…はぁ佐藤 聖…3年だよ」
笑い過ぎて息切れを起している聖さん…この人下ネタ好きか?
「3年生だったんですか…ご無礼致しました」
上級生相手に、ちょっとアレな発言をしてしまったので一応謝る。
「いいよ、君って楽しい子だね~夕貴って呼んでいい?」
呼吸が漸く治まってきた聖さんは楽しそうに笑顔で聞いてくる。
「いいですよ」
「よしっ、それでさー夕貴ってもしかして外部入学者?」
おや…やっぱり分かってしまう物なのかね?
「そうです、高校からリリアンです」
「あーやっぱり、なんかリリアンには珍しいタイプだと思った…はは、気に入ったよ夕貴の事…ねえ私と友達にならない?」
ニコニコしながら聞いてくる聖さん、別に断る様な理由も無いし特に何も考えず頷く。
「いいですよ、聖さんっていいキャラしてるっぽいし…よろしく聖さん」
「うん、こちらこそよろしく夕貴!!」
こうして学年は上だけど、下ネタを言っても大丈夫な友達をgetした。
あれから、聖さんは用事があるからと言って去って行き…私は志摩子の行方が分からないので校門に向かった。
「志摩子…発見」
そして校門の所で立ち尽くす志摩子を見つけた。
「あ…夕貴!!」
私の姿を見つけた志摩子は、私のもとへ駆け寄ってくる。
「ごめんなさい!!いきなり走って行ってしまって…」
駆け寄るなり頭を下げてくる志摩子。
「置いてけぼりにされて…悲しかったぞ…」
しょんぼりと落ち込んだ振りをしてみると、焦った志摩子がオロオロとする。
「本当にごめんなさい!!」
なかなか珍しい表情だ、普段は穏やかにフワフワ微笑みを浮かべてる志摩子。酷いかもしれないけど、たまに違う表情を見るのもいいもんだ。
「志摩子には…お仕置きしなきゃだな」
しょんぼり俯いていた顔を上げ、ニヤリと口の端を釣り上げる私。
「え…?きゃっ!?」
私の両手は志摩子の脇腹に伸びて、柔らかい志摩子の体を擽る。
「あ…ゆ、夕貴っ!?んっ…やめ…くすぐったいわ…」
「………」
何か凄く色っぽい…少し後悔した…。
「夕貴?」
「こほん…とりあえず帰ろうや」
頬を赤く染めた志摩子からそっと手を離し目を逸らす。
軽く咳払いして、気を取り直し提案してみる。
「?…そうね」
私は頷いた志摩子と二人、近くのバス停に向かって歩き出した。
何だか締まらないが、私のリリアン初日はこうして終了した。
[2回]
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2010/03/08
二次創作…マリア様に眼潰し(連載中)
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