私は私立リリアン女学園に通う一、一般生徒です。
名前は晶、私…晶には人には言えない秘密があるのです…それは…転生者だという事。
えぇ、よく二次創作小説で見かけるテンプレ的な存在なのです。
そして転生先の世界は『アリア様がみてる』という小説の世界。
今世の赤ん坊からのストーリー?必要ですかね?別に特に面白い事なんて無いので端折ります。…だって面倒じゃないですか、現在までの17年間の話を一々語ると…1時間?位掛りますよ?え?短い?ほっといて下さいな、語る本人にとっては長いんです。
そんな私は、テンプレ通りにリリアンに通い…目立たない一般生徒として日々を過ごしています。
「ねえ、えーと…」
「何でしょう…聖さん」
そんな私に話かけてくる隣の席の人、薔薇の館の住人…白薔薇さまの佐藤聖さん。
この人、私の名前知らないんだな…と思いながらも普通に返事する。自己紹介なんてわざわざしません…だって幼稚舎から一緒なのに名前を知らない、もしくは覚える気の無い彼女にそんなの必要無いでしょう。
その聖さんが、私に何の用なんでしょうかね?
「少し頼みがあるんだけど、明後日にある新入生におメダイをかける時にお手伝いしてくれないかな?」
明後日…確かにそんな行事がありましたね…しかしこんなに日が迫ってからお手伝いを頼むなんて…この人忘れていたのでしょうか?
日頃、あまり感情を出さない彼女の表情に、少し困っているようなモノを見つけ…軽く私は頷いた。
「いいですよ、確か籠を持ってメダイを聖さんに渡していけばいいんですよね?」
「そう、ありがとうよろしくね」
手伝いが確保出来、肩の荷が下りたのか、ホッとした雰囲気で聖さんは礼を言ってくる。私は頷き、次の授業の準備をし始めて、聖さんとの会話は終わった。
そして当日。
私はお聖堂に向かって歩いていた。
新入生たちが来る前に、お聖堂に入らなくてはいけないので少し早足でだ。
読書をしていたら、少し遅くなってしまったが…チラリと腕時計に目をやると、何とか集合時間には着けそうだ。
お聖堂に到着しその扉を開き中に入ると、そこには現在の山百合会のメンバーが揃っていた。
入ってきた私にメンバーの視線が集まる。
「晶さん?」
私の名前を呼んだのは紅薔薇さまである水野蓉子さん。
「遅くなってごめんなさい」
そう言って軽く頭を下げる。時間的には遅れていないが、もう皆集まっているので一応。
「聖がお手伝いを頼んだのって晶さんだったのね」
「…ええ」
黄薔薇さまの鳥居江利子さんが、私を見て言うと聖さんはそう返事をする。
江利子さんも幼稚舎時代からの同級生だから、彼女は私の名前を覚えていたようだ。
ちなみに蓉子さんは中等部から外部入学してから、何度か同じクラスになった事があるので、しっかり者の蓉子さんは私の名前を記憶していたようである。
まあ…聖さんは他人にあまり関心のある方じゃないっぽいし、フレンドリーな性格に変化し始めるのは、原作の主人公である福沢祐巳が薔薇の館に出入りし始めてからだろう。
「今日はお願いね晶さん」
私が山百合会のメンバーのいる場所に歩いて行くと、蓉子さんが柔らかい笑顔で言った。
「ええ」
頷き返事を返す。
紅・黄薔薇の蕾である小笠原祥子、支倉令にも軽く会釈してから、今日の進行についての説明を受けた。
無事に終了し、私はお聖堂を後にする。
基本原作には不介入を貫いている私…今私が生きているこの世界は『マリア様がみてる』の登場人物が実在し、私の知る小説と同じ道筋を辿っている。
聖さんと久保栞の件も、決して近くではないがリアルタイムで見ることが出来た…別に野次馬根性で見ようとした訳でもなく、リリアン生徒ならある程度知っている内容である。
聖さんともっと仲良くなって、忠告なりすれば久保栞との破局を阻止する事も出来たのかもしれない…ただの可能性ではあるが。
私はそうしなかった…、原作を壊したくないなどの理由でもなく、ただ傍観者であり続けた。
今も傍観者である事には変わりがない。
ただ今回の手伝いも、たまたま佐藤聖と同じクラスで、たまたま佐藤聖の隣の席に座っていたから、発生した事柄に過ぎない。
私はこの世界に生まれたが、未だにこの世界で生きている実感が湧かない。
そんな私は何時だって…傍観者のまま…昔『マリア様がみてる』を小説で読んだのと何が違うというのだろう?これは…実写ドラマを見ているようなものだ。
私は生きていると言えるのだろうか?
マリア像の前に差し掛かる…穏やかな表情をしたマリア様に問い掛ける。
「あなたは、私に何をして欲しいの?」
マリア様から……返事が返って来ることは…なかった。
後書き
久しぶりに書いた小説。ぶっちゃけ意味不明(笑)しかも続くか不明…
[4回]
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2010/07/14
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